RN.サクサクなハッサク

雑記、日記、アウトプット

気の迷いのセルフ連載1-②

 Y市はテレビの旅番組でたまに見る関東圏の港町。

 テレビでは首都圏から近く、おいしい魚料理が自慢と紹介されている。しかし実際、漁業は30年以上前から低迷していて、若者は大学進学と共に東京に出て行ってしまうさびれた港町。住民はおすすめの飲食店を聞かれてもチェーン店しか思いつかない。

 観光客は水族館で魚をみて、その後に魚を食べて海を眺めながら渋滞する帰路につく。そのため飲食店は早めに店じまい。20時以降になれば波の音しか聞こえない、陸の孤島のような町である。

 そんな町のコンビニは混んでいるわけではないが閑古鳥が鳴くほどでもない。24時間営業で求人があるため客側、店員側双方にとって欠かせない店になっている。

 

 松田は大学1年生、同じ野球部の友人の紹介でバイトを始めた。シフトは部活のない日曜と月曜の17時から20時がメインでテストや長期休みの時は不定期で働いている。

 松田の大学はY市の隣の町で同様に陸の孤島である。つまりY市周辺の市町村は陸の群島地域で大学生はバイト先を奪い合っている。バイトの頻度少ないため仕事がなかなか覚えられなかったが数少ないバイト先で、シフトも融通が利くためMはこのコンビニを気に入っていた。

 このバイトが松田の初めてのバイトである。また半年前に初めての彼女ができた。来月のクリスマスデートでサプライズプレゼントをするためシフトを多めにして授業と部活とバイトで松田は疲弊していた。最近けんかが増えてきているが彼女のためなら怖いものはない。「アイスランドにはサンタが13人いるらしい」とどうでもいいことを思い出しながらバイトをこなしていた。

 松田のシフトでは店長と父くらいの年齢の木島とよくシフトが被る。店長はシフトの相談などしゃべりやすくてありがたい。木島とは更衣室で一緒になった時に木島の履いていたパンツを見て「お揃いですね(精一杯のさわやか笑顔)」と言ったが「...そうですね」で会話終了。松田は「自分の父親と同じくらい愛想悪いな」と思う一方で、「嫌われているのかな」と若干不安になった、それ以降、元々少ない口数がさらに減った。

 松田は高校時代は部活しかしていなかったためおしゃれに疎かったが彼女が出来てからは客の服装を見て参考にしていた。平日夕方の仕事帰りの男性は同じような服装が多い。いつも月曜に来て青いアウターを着ている客を松田は「ブルー」と呼んでいる。前に1回だけ酔っぱらった「ブルー」が来たときは普段と違う恰好と笑顔で驚いた。ヤンキーが子犬を助けるみたいなやつだ。その日の「ブルー」の服と似たような服を先週買ったらしい。

 シフトが終わったら先月買った服を着る。彼女以外触れてくれないが彼女が褒めてくれたならそれでいい。明日までの課題があったことを思い出しエナジードリンクを買って松田は自宅に帰った。